世界中の音楽雑誌がまだやっていない、40000字に及ぶPSBセルフ全曲解説&ロングインタビューを、どーんと掲載!
「セカンドアルバムの裏設定の敵は、石油メジャーと穀物メジャーと武器メジャーだった」「カントリーは渋谷系の終焉の暗喩?」「ハトはフランスの軍人が食う !?」など、驚愕の事実が明らかに!

いちファンサイトである当サイトのインタビューに、長時間割いてくれたハヤシベトモノリ氏に感謝を。
尚、当サイトとアーティスト側の同意により、このインタビュー本文の著作権を放棄します。あらゆる媒体への転載を許可します。ラブ。

セカンドアルバム『cartooom!』について

『cartooom!』
VROOM SOUND
2004/06/16
>>VROOM SOUND『cartooom!』解説ページ(試聴あり)
>>amazon


——まず、今のところの最新アルバムで、大問題作と呼ばれている『cartoom!』について伺っていきたいんですが。
はい。
——正直に告白しますと、コレ最初に聴いたとき、何が何やら分からなかったんです。みっしり情報量多くて、速くて、アルバム自体の長さも30分弱しかなくて、「ん? なんだ、なんなんだ !?」と思ってるうちに、がーっと終わっちゃう。
ははは(笑)。
——あのね、すこし説明が欲しいなあ……って、ずっと思ってました。
あー説明します。
——よろしくお願いします! で、コレ……壮大なコンセプトアルバムなんですよね。「2人の博士(天才と助手)が作り出した女の子型アンドロイドを主人公に繰り広げる架空の近未来カートゥーンアニメ(ドタバタ・コメディ)」。
そう、コンセプトはカートゥーンです。
——サンプリングソース、音の素材の数がめちゃくちゃ多かったっていうのが話題になってましたけど。4500?
4500ですね。ほんとは細かいこと言うと、もっと使ってるんだけど。
——その多さって……度合いが分からないんですけど。
サンプリングを多用する人で、普通は1枚のアルバムで100から200くらいじゃないかな。
——じゃあ4500というのは、どうかしてる?
どうかしてますね。たぶん世界一だと思う。まあちっともいばれる話じゃないけど。
——なんで?
サンプリングを多用することより、むしろ逆で、いかにクールなネタを最小限に使うかが、カッコ良さの基準って昔から決まってるんです。
——へ、へえ……そうなんですか。知らなかった。
いや、別に多く使ってるのはたいした問題じゃないですよ。例えば、4500種類の絵の具を使ってる絵があったとしても、「へーそうかー」って思うだけでしょ?
——そうか、そうですね。でも異常だってことは分かりました。 あとこれ、歌詞ほとんど英語ですけど、ハヤシベさんって英語得意なんですか?
いや、これね……僕、アメリカの一コマ漫画がすごい好きなんですよ、風刺とかの。それを色々切り貼りして作ったから、歌詞も、実はサンプリング。
——げえ。
全集本をいっぱい持ってるんですけど、そこから引用して。自分がこうしたい、っていう内容に沿ったものを見つけるのに、すっごい苦労した。
——そりゃ手間かかるでしょう。
でもそうしないと、アメリカのカートゥーンっぽくならないかなーと思って。もちろん自分で直したりしたし、さすがに後半は自分で書いた部分もあるけど。
——岡崎京子の『pink』ってマンガに出てくる人みたいですね。
なにそれ?
——うーんと、主人公の男の子が、好きな小説をハサミで切り貼りして、新しい小説をつくるんですよ。
うひゃー、それ、気が遠くなるね。めちゃめちゃ大変。
——……あなた、やってること同じですよ! で、全曲?
全部じゃないけど、2.3.4.9曲目は、その方法で作ってますね。
01.CartooomTV
——歌詞の中に出てくる17チャンネルというのは、ファーストアルバムの1曲目「Channel No.17」と同じですね。
そうですね。17というのは、PSBの数字なんですよ。
——なんで?
うーん、好きな数字だから!
——そんな理由 !?
いや、これって一番素数らしい素数でしょ? 例えば3とか5とか13とかだと、一発で素数って分かるでしょ。でも17だと、一瞬「ん?」って考えるじゃないですか。それが好き。でもあんまり意味ないです。
——そうすか。……で、歌詞は「ようこそ!」っていうような内容で。
カートゥーンの番組が始まります、というオープニングの曲ですね。『トム&ジェリー』や『フリントストーン』の、古くさい60年代のカートゥーンのイメージ。このアルバムに参加してるボーカリスト、9人全員で歌ってます。
——9人ボーカルがいて違和感がないというのも、このアルバムの特徴ですね。
このコンセプトだと、こういうやり方しかないと思ったんですよ。これ、比較的気持ち良く聴ける、耳あたりのいい曲でしょ。
——比較的(笑)。
2曲目みたいな曲が最初だったら、女の子のリスナーとか、聴く気がしなくなるんじゃないかなーと思って。
02.fiddle-dee-dee!!
——2曲目は歌詞カードに、「I'm perfect !!!!!!!」って1行しか書いてないんですけど……どうしてなんですか?
あのね、2曲目作ったあとに、ファイルがクラッシュして紛失してるんですよ。
——壊れたんですか。
僕ら打ち込みする人にとって、コンピューターのクラッシュは本当に無だから、ゼロになるから。それで歌詞、何言ってるか分からないところがあって。
——ええと、じゃあ歌詞が無いのはデータ紛失のせい、と。
でもこれは「アイムパーフェクト」っていうのが全てだったりするので、それだけ載せることにして。コンセプチュアルに。
——後付けのコンセプチュアルなわけですね……ほんとかな……。で、アイムパーフェクトのアイは誰なんですか? ロボットの女の子?
女の子ですね。この子は悪者を退治するんですよ。
——ロボットちゃん登場の巻、みたいな感じですかね。
カートゥーンの番組が始まりますよ、っていうのが1曲目で、2曲目がこの3人の物語が始まりますよ、っていうオープニング。
——あ、1曲目は『ニッケルオデオン』みたいな枠のジングルで、2曲目は『スポンジボブ・スクエアパンツ』とか、番組単位のオープニングなんですね。
だから本当は続くんですよ、他の番組とかが。
——1曲目とちがって、最初が耳障り悪いというか、ひっかかる音になってますね。
何この音? って違和感を感じると思うんだけど。そのあとは爆発、みたいな。bis みたいに、ダーっと。
——bis(笑)。
そこでロボットが飛んでるシーンになるんです、ダーっと。
——ていうか、飛ぶんですね?
飛びますよ! 全然、全然飛ぶ! ていうかねえ、最初のジャケット案では飛んでたんですよ、この女の子。
——飛んでたのか。
あとこの曲、森の中みたいなシーンがあるんですけど、唯一そこは僕が歌ってます。
——後半、アコースティックになるところですね。いつもコーラスで歌ってるのは、ワキヤさんですよね。
このときたまたまワキヤがいなかったんだよ。俺、血迷ってたんだと思うんだけど、自分でやりたくなかったんだけど……とりあえず仮で歌おうかな、ってやったのをそのまま使ったのかな。
——ここ一ケ所だけ?
そうですね。
——PSBの曲の中で、いちばん男声パートが出てる部分ですよね。
ツインボーカルっぽくしたかったんですよ。歌詞の意味的には、カウンターカルチャーを持って、ピクニックにでも行きたいね、でも君はバカバカしいって言うよ……っていう珍しく哲学的なことを言ってるんですけど。
——良い詞っぽいですよね。歌詞読みたかったなあ。
ねえ。……この時の俺の精神状態、どうだったんだろうね? だって歌ってるし!
——でもここ、アルバムの中でも最高に気持ちいい箇所ですよ。
ネオアコ好きな人には、聴きやすい部分だと思いますよ。PSBはジャンルごった煮だって言われるけど、この曲はいちばん象徴的な曲だと思う。パキパキパキっとジャンルが変わっていって、一緒なのはスピードくらいだから。
——全体的に、何か決意表明っぽく聞こえる曲ですよね。
そういう歌詞が要所要所に出て来てるからね。でも「fiddle-dee-dee!!」っていうのは、バカバカしいよ、みたいな意味の言葉遊びですよ。 ……これ、見る人が観たら、『デクスターズ・ラボ 』なんですよ。『パワーパフガールズ』に、もうちょっと毒っけ入れたようなカートゥーンがあるんです。 IQ180の天才少年が、いろいろ発明をするんだけど、ディーディーっていうハチャメチャな妹が邪魔をするんですよ。そのドタバタコメディ。
——あ、絵のイメージも似てる。
僕がデクスターで、ロボットの女の子がディーディーのイメージ。そのまんまの感じ。ディーディーっていう名前が好きなので、タイトルはそれにもかかってます。
——いろいろ意味がかかってますね。これボーカリストは?
初代ボーカリストのカマダジュンコちゃん。じゅんちゃんの最後の曲ですね。
03.Dough-Nuts Town's map
ここではドーナッツタウンのことをあれこれ紹介してます。
——主人公の住んでる街ですよね。
ドーナッツ型の街なんです、真ん中に広場があって。リポーターが街の各所を紹介してるんです、場面場面で画面が変わって、その都度、そこにいるキャラクターが解説をする。
——場面ずつ、ばんばんキャラクターが出て来るイメージ?
そう、「ここはゲームセンターです!」とか、一人一人がキャラクターに応じた言葉を言ってて。これも9人全員で歌ってます。
——……うわコレ、1フレーズづつ、別の人の声なんですね。気がつかなかった。
そうですね、二人で重なったり、瞬間的に三人分の声になったり……ボーカルの処理、作業してる僕自身も気が狂いそうになった。ソフトを立ち上げるとねえ、画面がすごいことになってて(笑)。あとねこれ、好きな場面があるんです。
——好きな場面? ハヤシベさんの中では、映像化してあるんですか?
うん、これは言っておきたいんですけど、ええとね……「haunted house changes to the house of candy」、お化け屋敷がお菓子の家に早変わり、っていうところ。こう、魔法がかかるんですよ。
——キラキラキラキラって?
そう。普段はお化け屋敷で、変なおばあちゃんが住んでる。180歳なんですけど、かぎ鼻で。
——……それはいつ決めたんですか。
いや、それは曲を書くときに、設定を全部書くんです。この魔女、良い魔女でも悪い魔女でもないから。あのね、何もしない魔女。あたりさわりのない魔女(笑)。敵は別にいるんですよ。
——それは、何か怪物とか?
いや、石油メジャー。
——石油メジャー !?
ここは中西部の街だからね。最初に考えた設定はですね、ネバダ州のね、カジノが滅びたあとに、カジノの施設を使って石油メジャーがいろいろ悪いことをするんですよ。武器メジャーとかユダヤ資本とかとくっついて。
——ほう。
それで発展してる街なんです。ドーナッツタウンは実は真ん中に……プルトニウムとかあるんですよ。
——そんな裏設定が(笑)。
裏設定、めちゃめちゃありますよ。もっと詳しくあるんですけど。このロボットの女の子も、ラボも、そこに組み込まれていたんです。僕らは利用されているわけです。
——ええと、このロボットはひょっとして原子力?
まあそうですね。でもその全体の設定を入れ込む曲がなくて……。
——石油メジャーのことをですか。
そう。一応モンスターも出て来るんだけど、ゼットンみたいなものなんですよ、核融合反応みたいな。……っていうのを考えてたんだけど、そういうのを歌詞にしていくと……歌詞にならないんですよ!
——なりにくそうですねえ。
僕らが角生えてるのもね、一種のミュータントなんですよ。僕は「天才の博士」で、ワキヤは「秀才の助手」なんだけど。ドーナッツタウンは新人類の街なんですよ。 いろいろ他にも設定あるんですよね、IQ200のサルとかがいたり。バブルスくんという名前のペットで(笑)、それもミュータントで。 ……あ、当時書いたメモを持ってきたんですけど、ちょっと見せましょうか?
——おお、見せてください。
「ネバダ州は近未来都市な様相になってる。なぜなら隕石が落ちてきてカジノが全部壊滅してしまい、 ラスベガスという街の、ありとあらゆる賭博システムが近未来をテーマに再利用され、21世紀最後の大々的な万博は大盛況。 おまけにラグボールなんていうやたらスクェアな新しいスポーツがネバダ州を中心に盛り上がって、デトロイトあたりの自動車産業がスポンサーとなり、一斉に破竹の勢いのネバダ州に移転。 おかげて半導体テクニクスの急先鋒としてネバダ州は世界一の近未来都市となったのでした。 しかし裏では、ハヤシベの開発する半重力素粒子がその根幹を支えており、それを狙うフラテリー・センデロルミノソというマフィアがそれを狙い暗躍。 ちなみにマフィアのボスはクラシコイタリアなスーツ。」
ボス……こんな感じか?

——……これはメンバーとかボーカリストに説明するんですか?  演出として。
いや、曲を作る時に俺が自己催眠するための資料。
え、ええー? ……でもこのメモでは、石油メジャーは出てきてないですよね。
あ、あれ? これ自動筆記で書いてったので……ここからまたドンドコ変えてったんですね、たぶん。
——……とりあえず、渋谷系からは、どんどん遠くに離れていってる気はします。
04.f(ake)
これも作ったときのメモがあるんですけど。
——どれどれ。
「主人公のテーマ曲。主にcoolな場面で使用。変則パンク。 途中でチャップリン的なラグタイムピアノ。 なぜか試験管をもって怒っている。 主人公の髪型は『ニューキッズオンザブロック』という、この時代の3年前に流行ったヘアースタイル。 性格は『ジキルとハイド』。 小動物(主にアルビノの)が好き。 自分は『ホーキング博士』の生まれ変わりだと信じて疑わない(まだ生きてる)。」
——ニューキッズオンザブロック……という髪型 ??
で、これは主人公のテーマソングなんです。この女の子ロボットは、怒ると変身するんですよ。変身するとね、ロケットを持つようになる。
——このジャケットの状態ですかね?
そう。このロケットも、プルトニウムが……。
——プルトニウムが(笑)。
バツ印が付いてるのは、触っちゃいけないっていうサインなんですね。……この女の子は、基本的にいじめられっこなんですよ。いじめられっこだった過去を持ってる。
——子供なのに過去があるんですか? 
あたり前ですよ、過去はありますよ!で、怒ると突然ロケットが現れるわけですよ。
——なにもないところから突然あらわれるんですか?
そこはやっぱり、ミュータントだから。で、怒るときには、常にこの曲がかかるんわけですよ、このやろーっていう。ゴゴゴゴってなってるところに、ギターが入ってくるんですよ!
——キタキタキターって感じで。
楽しいマンガでしょ、ちょっと観たいでしょ(笑)。
——……これ、「f(ake)」ってタイトルは、意味あるんですか?
あんまりないです。変える前はcatch22っていうタイトルだったんだけど。
ちなみに『キャッチ22』はジョーゼフ・ヘラー著の小説のタイトル。映画化もされてます。

タイトルは最終的に字面を見て、結構変えました。長さとか、視覚的にデコボコ感のバランスを作りたくて。あと、この曲はレッチリなんです。
——レッチリ?
知ってます? レッド・ホット・チリ・ペッパーズってバンド。
——あのー、全裸で、だいじなとこだけ靴下に入れてるアーティスト写真で有名な……あのレッチリですよね?
そうそう。僕、アルバムの中に必ずレッチリっぽい曲を1曲入れことにしてるんですよ。
——レッチリ……それはなんで?
好きだから!
——そうすか……。
この曲のボーカルは、PINE*am(パインアム) のTsugumiさんが担当してますね。
——誰がどの曲とか、ボーカルの割り当てはどうやって決めたんですか?
もちろん曲の感じで。Tsugumiさんは可愛い声とちょっと狂った声をうまく出せる人なので、この曲にとてもいいなと思って頼みました。
05.SUZZZZZY
——で、次の曲は「身長2Mのファットガールによる変則ヒップホップ」だそうですけど……。
身長2メートルで体重200キロなんです。赤毛で三つ編みしてるんです。フィットネスルームとかでダイエットとかしてるんです。
——ふむふむ。
これね、ヒップ・ホップをやってる、ウイッチクラフトさんっていう女の子が歌ってるんですけど、本人はすごい痩せてます(笑)。あと歌詞も書いてくれてます。
——2メートルとか、コンセプトを伝えて発注したんですか?
性格とかも説明しましたね。あのね僕、アメリカについて、結構調べたんですよ。日本でいったら関西人はこうで……みたいな、気質の話を。アメリカ中西部の女の人は強いっていうイメージなんですね。
——この彼女はロボットの女の子と、どういう関係なんですか?
これはね、関係がないですね。
——関係……ない !?
もちろん、ちょっとしたことはあるよ。
——ドーナッツタウンに住んでるんですよね、とりあえず。
そうそう。でもいろんなドタバタが起こる話だから、いろんな登場人物がいる、っていう感じですね。
——これは何を歌ってるんですか?
これはシンデレラ批判ですね。かわいこぶってんじゃないわよ、というような内容です。
06.starship.6
——この曲ってアルバム中、もっとも不可解な歌詞ですよね。
この歌詞は僕ですね。
——……これ? 
これいちばんね、僕の中から出てる歌詞ですね。
——「とりあえずシェイクでヒップ☆」とか?
何も考えずにスラスラスラーって書いた歌詞。出て来る言葉を添削せずに。
——センスがギャルっぽくないですか? 本当に若い女の子が書いた歌詞なのかなあって想像してたんですよ。
これ、一応コンセプトがあるんですよ。ロケットなんだけど、同時に女性型のロボットなんです。
女性型ロボ……ってこんな感じか? いや、わかりませんけど。

で、出て来る言葉をメロディに合わせて書いたら、こうなったっていう。
——うーむ……。
だからこれはですね……かなりラリってるようなイメージですね……。
——あー、ラリラリですね。
これ、自分で見ても面白い歌詞ですよ。いや二度としませんよ、二度としないけど、こういう作り方は!
——「ギガヘルツ」とか、普通にスッと出てきたんですか?
ギガヘルツ、って素で言って欲しかったんですよ。濁音にチカラ入れないで。「どこでもドアー」みたいなニュアンスで。あとね、これ日本で製造されたロケットだから日本語なんですよ。ナスダ製。
——ナスダで作って、ネバダ州にあるんですね。
部品部品を日本で作ってあるんですよ。組み立てはネバダ。ちなみにいにしえの「ふとん圧縮袋」の技術を応用してて、17人までのれる仕様のロケットです。
——17人……。これ、ボーカリストは?
ヘーゼルナッツチョコレートのゆっぱさんですね。ゆっぱさんは人間的な歌を歌う方なので、すごく加工して機械っぽい声にしてあります。本人が聴いても分からないくらいに。
07.CM#&'($_?>!
——アニメ番組、という設定なのにアルコールのCMですよね?
これは大人向けのカートゥーンですから。一応、「プラスティック・ウイスキー」とう商品の宣伝になってます。これはね、マリリン・モンローの偽ものが出てるんです。
「ホテル聚楽」のCMに出てた人、あの人がすっごい好きで。あの甘ったるい感じが。
——ハヤシベさんて、20代の青年とは思えない知識をお持ちですよね。全体的におっさんくさい。
なんだよう(笑)。
——いや、きっと超早熟な、知能の高いコドモだったんだろうなと……これ、どなたが歌ってるんですか?
ボーカルはR&Bのシンガーの櫻倉レオンさん。次の8曲目もそうです。
08.THE mARTIN SHOW!!
これね、僕、カネボウの『SALA』のCMの曲を書いたんですけど、それを発展させた曲ですね。米倉涼子さんが出てたCMです。
——いろんなお仕事されてますね。
これはドーナッツタウンの住人たちが、テレビに出てるシーンなんですよ、『マーティン・ショー』って番組に。向こうの番組で、人の名前をつけた、なんとかショーっていう名前の多いじゃないですか。
——調べてみたんですけど、実在しますね、『The Dean Martin Show』っていうのが。
お! でもそれじゃないです。
——歌詞はちゃんとしたラブソングですよね。
これはワキヤが書いたんですけどね。でもこの曲は『マーティン・ショー』っていう番組のテーマソングだからそういう象徴的な意味合いがあるっぽいです。
——テーマ曲なのか。この曲は通常一番聴きやすいと思うんですけど。
ここまでPSB的なカットアップの連続で、聴いてる側は疲れてるんじゃないかなあと、さすがにここで息ついてもらおうかなあと思ったんですよ。……でもね、僕、この時点でちょっと考えが甘いんですよ。もっと早い時点でリスナーは息切れしてるんじゃないかと。
——あー……。
僕がねえ、分かってなかったんですよ! アドレナリンが出まくってるから、気がつかなかったんだよね……。
09.Uncle Chicken's drag rag
——カントリーですね。ハヤシベさん、カントリーお好きですよね、PSBでは何度も使ってる。
早いのが基本的に好きなんですよ。フィドル(バイオリン)の早弾きとか、すごい面白いじゃないですか。これね、チキンカッターおじさんの家が、ワイオミングにあるんです。
——……ちょっと待ってください、そもそもチキンカッターおじさんって何者なんですか?
ニワトリ。ニワトリなんですけど、擬人化したニワトリなんですね。僕=天才の博士の親戚で。
——……はい。
ワイオミングのおじさんの家に行くシーンで、馬車に乗せてもらってるんですよ。そこでおじさんが問わず語りに喋ってるんですよ。
——俺は昔はブイブイいわせてて……みたいな話をですか?
そうそう。デイビー・クロケットみたいに熊と闘ったんだぜ、みたいな話を。それを僕は、目をパチクリしながら聞いてる感じですね。で、途中で悪い奴らが追ってくるんですよ、馬車で、石油メジャーが。
——石油メジャーが馬車で!!
で、倒してまた進んでいくっていう。バキューンって音が入ってるでしょ? そこは決闘のシーンですよ。
——それは天才が決闘してるんですか?

いや、だからチキンカッターおじさんが(笑)。これは好きなので、是非、我慢して日本語訳してもらったりすると、楽しめるかと思います。

※以下は後日、ハヤシベ氏ご本人から頂いた「Uncle Chicken's drag rag」制作過程での意訳メモ。「『特攻野郎Aチーム』の『クレイジーモンキー』の吹き替えをしているヒトの声で読まないとダメ」だそうです……。

(意訳)
ヘイヤッ!気ィつけろ!落ちんなよ!

小僧。オレはな、ここワイオミングで生まれたんだ。
みんなはオレのことを敬意を持って「チキン・カッターおやじ」と呼んでいる。
覚えといてくれよな。
ん?ああ、ディビィ・クロケットのように熊と戦ったりもするさ。

さあさあ、スピードをあげていくぞ。ドウドウーィヤークルックー!

*鼻歌
オレ様は弾丸〜♪
馬は走りつづける〜♪
しっかりつかまってろ〜♪
西部を駆け抜ける怪男児〜♪

あっちの山を見てみな!昔ワイアットアープが待ち伏せしてたんだ。ああ、本当さ。
あそこの峡谷!あれはな、ゴールドラッシュのときに見つかったもんだ。
つまりこいつは西部の道無き道をひた走ってるのさ(わかるかボーイ?)
馬車の名前はもちろん、、
「チキン・カッターおやじのスーパープレッピーフラッパー号」だ!

10.Fantasie C dur P.491 -Generalprobe-
これはゲネプロですね。ゲネプロって、練習の収録。
——オーケストラですね。
本当はね、時間があったら、ハリウッドのさあ、『スターウォーズ』みたいな、オーケストラを使った敵との対決シーンを作りたかったんですよ。譜面書いて、全部音を自分で作って。結局時間がなくて、サンプルを組み合わせて作ったんです。出来なくて悔しかった。
——これ、ラスボスが現れるシーンですか?
そう、オーラスのシーンのサウンドトラックです。ラスボスみたいなものが、黒いところから出てくるんです。
——黒いところから! ところでこの491って何ですか?
491は、モーツアルトのケッヘル番号のようなものが単にやりたくて、適当に付けました。この曲は11曲目の前フリになっています。僕の中で、アルバムの中のインストって、その次の曲の修飾っていう形が強いですね。
11.rival
これはラスボスと、僕ら3人が真面目に戦ってるシーン。
——どこで?
なんか敵のラボ、要塞みたいな広いところですね。この曲のボーカルは、フロッタージュのヨアンちゃんです。
12.Hoky-Poky a.la.mode.
——「パリ生まれのペルシャネコが唄うフレンチ・スウィング」だそうですね。
僕=天才の恋人が猫で、その恋人のことを歌ってる曲ですね。ミュージカル風。
——猫が恋人なのかー……これもなにげにラブソングですね。
そうですね、ミャオー、とか、グルル、とか、歌詞に出て来て……この猫は、アメリカンショートヘアーが嫌いとか、細かい設定もいろいろあるんですけど。
——どうしてもディズニーの「おしゃれキャット」が浮かんでしまいますね。
おしゃれキャット……に似てると思いますよ、ペルシャ猫だしね。僕の中で考えてたのは、もうちょっとツンとしてるイメージかな。ボーカルはソニック・コースター・ポップのフルカワさんです。
——たくさんの女性ボーカリストに歌ってもらうのって、大変そうですよね。
レコーディングが毎日違う女の子でね、みんな個性的だったから、大変だったですねえ。
13.PAPA says
これはエンドロールです。
——華々しいカーテンコールですよね。
これ本当は、最後の曲はバラードにしようと思ってたんですよ。アメリカっぽい80年代っぽいバラードにして、とぼとぼと街を歩いて行くシーンにしたかったんだけど。
——え、なんか意外。
そんなのリスナーが飛ばして聴かないよって言われて、じゃあいいやって、やめました。
——ずいぶんアッサリやめたんですね。で、ひょっとしてこのタイトルも、意味ないんですか?
バラードのときのタイトルをそのまんまです。
——え、えー?
このセカンド出して、もういいや、と思いました。だって本当にもう、この時点でやりたいことは、だいたいやったから。
——渋谷系……じゃないですよね、これ。
まったく渋谷系じゃないとは思わないけど。
——渋谷系じゃない気がする。
……もともと渋谷系っていう方向性も、初代のボーカルの子と話して決めたことだから。セカンドは自分の元々の資質が強く出た感じですね。カートゥーンがやりたかったんです。『トム&ジェリー』の音楽って、相当すごいことをやってるんですよ。
——映像とのシンクロとか?
そう、ものすごいシンクロ率。シンクロ率にずっと震えてた。それを音楽で表現するとしたら、これくらいは情報量がないとダメだと思って。『トム&ジェリー』の音楽のようなものをやっても、『トム&ジェリー』のマンガを表現したことにはならないでしょ?
——それでこんなに気持ちの悪いアルバムが出来てしまった、と。いやでもですね、本当に最初は分からなかった。聴いててワケがわかんなかった。
……投げっぱなしだったもんね。でもね、人に対してというよりは、自分の自己満足だったんですよ。もうね、作ったあとはっきり言って、すごくヤル気を無くした。作ってそのあとマスタリングやって、レーベルの人と販売戦略を考えたりしなきゃいけなかったんだけど、全部「どうでもいいすよ〜」みたいな感じになって。
——宣伝活動もあまり……してないですよね。
ジャケと音と、この作品が出来た時点で、もう、放棄してましたから。生きるのを。
——生きるのを(笑)。
全くヤル気しなかったからね。
——前作から4年かけて作った作品ですもんね。……で、今後の展開が問われるわけなんですけど。
だってもう、ポップにするしかないでしょう!
——あっちの世界にいくか、どっちかですね。
そういう資質はないから。最後まで狂えることはないから。あっち側には行かない。
——はい。
ただやっぱりファーストもセカンドもそうなんだけど、過剰なものが好きだから、過剰なものが作りたい。何が過剰でもいいんですけど、どういう形態でもね。
——サービスサービスで。
ほんとサービス過剰だよ、慈善事業家だよ俺!